『前に一回手を出しちゃった相手がめちゃくちゃ普通に接してくれて、なかったことにされてんのかなとか色々考えて悩んでる』
ゲームの合間にぽつりと漏らされた本音で、心の内側が一気にかき回される。明らかに自分のことだが、自分が聞いていい内容ではない。だがここで反応を鈍らせるのは不自然だ。
『相手の態度が変わらねえから、どう対応していいか分かんねえのか』
『そう。年下の子なんだけど』
『後輩か?』
『いや、その。引かねえ? 家庭教師の生徒なんだけど』
打ち込む速度が普段と比べて格段に落ちている。躊躇しながら、考えながら文面を打ち込んでいるのだ。眉根を寄せて困ったように唇を歪める姿が頭に浮かんだ。昔はよく見ていた、今ではなかなか見せなくなった表情。
知らないフリをしながら話を引き出していくことに、罪悪感がちくりと顔を出す。自分のことで悩んでいるという事実が仄暗い喜びにも変わる。
『生徒ってことは、処女に手ぇ出しちまったか?』
『まあ、そんなとこ。それなのにヤる前と後で、態度が全然変わらねえ。オレ一人だけが意識してんのか、それとも隠すのが上手いのか』
『嫌がらねえで普通にしてるってことは、相手はお前のこと、嫌ってるわけじゃねえぞ』
女心に詳しいわけではないが、対象は自分だ。断言をすることが不自然ではないか、打ち込んだ文章をざっと推敲して送信する。
『恋愛か友情かははっきり分からねえが、少なくとも好意は確実にある』
『好意だけなら自分も感じてるんですが……そっか。普通にしててもいいんですね』
『やっちまった事実から逃げることにはなるが、自分も落ち着けてはいねえ場合はそこまで悪手でもねえだろ』
本当に女に手を出した場合は、行為をしたあとに普通の態度でいろなんてアドバイスはありえないだろう。避妊をしたのか、責任は取れるのか。返答によっては殴ってでも正さなければならない場面だ。
『なんかスッキリした。これでゲームも勉強も集中できそう』
『集中してえときにはコーヒーがいいらしいぞ。俺は飲めねえが』
『コーヒー飲めねえって、なんか可愛いですね。じゃあナーシさんはそういうとき、何飲んでるんですか?』
可愛いなんて単語に苦々しい笑いが漏れた。見ず知らずの人間をありえない言葉でさらりと褒めているくせに、決して口説いているわけではない。コミュ力がないなんて自分で言っていたが、今も昔も人を引きつける魅力に長けている。
『ハーブティだな。カモミールとか、ミントとかそういうやつ』
『おしゃれくせえっすね』
『喧嘩打ってんなら買うぞ。タイマン勝負でもするか』
『売ってねえけど、面白そうですね。じゃあ次、一対一でやってみませんか』
手持ちの中で一番殺傷力の高い武器に切り替えた。当てづらいために普段は使わないが、エレンの動きの癖はよく知っている。
『ナーシさんがいてよかった。すっげえ心が軽くなった。オレ、結構ナーシさんのことも好きですよ』
『そりゃあ光栄なことだ』
喜びよりも悶々とした気持ちが勝り、複雑な気持ちで返信した。どちらも自分のことなのだが、感情がついていかない。
横目でちらりと顔色を盗み見ようとして、ばちりと視線がかちあった。
「リヴァイが意味なく集中切らすの、珍しいな」
「たまにはな」
バツが悪くなり、視線を無理やりノートに固定させる。普段と変わらない顔色をしていたくせに、腹の中では長い間リヴァイの態度で悩んでいたらしい。信じられない。しかし前々からエレンはそういうタイプだ。そして突然、周りが予想しない、突拍子もないタイミングで暴走するのだ。
「コーヒーがいいらしいぞ、集中できねえとき」
「飲めねえよ、コーヒー」
得意気に披露された知識にぶすりと応える。しかしエレンは臆することなく顔をずいと寄せてきた。心なしかニヤニヤと目が細められている。
「中学生には苦いか? じゃあ、ハーブティ」
色素の薄い瞳がリヴァイから逸らされて上に移動する。赤色のペンが大人の筋張った指の間でぐるりと回った。
「知り合いが教えてくれたんだけど……なんだっけ。カモミールとか、ミントだっけか」
正確に思い出してくれたようだ。知らなかったふりをするのも癪だが、得意気に変化した顔を崩したくはない。シャープペンシルを机に転がして背筋をうんと伸ばした。
「……休憩するか。お前は何飲む」
「同じやつ」
自分もハーブティを飲んでみたいのだろう。頬杖をついて、そわそわとした面持ちをしている。
「癖強いぞ」
「じゃあ紅茶か麦茶」
「わかった、淹れてくるからゆっくり待ってろ。適当にその辺を漁ってもいい」
「現役中学生のお宝かぁ」
「変態くせえな」
なんとも言えない視線を背中に感じながら、外へ一歩踏み出した。
この胸の内側から溢れ出しそうな悶々とした気持ちは何だ。ケトルの中でふつふつと湧き出す気泡を凝視しながら、心の中でひとりごちる。
『オレ、結構ナーシさんのことも好きですよ』
嬉しいはずが、思い出すたびに面白くない。むかっ腹を立てながら勢いよくポットに熱湯を注ぎ込んだ。くすんだ小さな白い花が、透明な湯の中で勢いよく舞い上がる。浮いては沈み、溺れるように不安定に。
『知り合いが教えてくれたんだけど、……』
知り合い扱いも気に食わない。一番気に食わないのは、エレンの好意がネット上の自分にも向かっていることだ。
ふいに見つけた答えに小さくため息をつき、眉根をぐっと揉んだ。リヴァイは自分相手に嫉妬しているらしい。我ながら馬鹿らしい。
ほぼ無意識に淹れ終わっていたハーブティとエレンの麦茶を手に持って、足でドアをこじ開ける。
「いいとこの坊っちゃんの足癖じゃねえ」
「好きでいいとこの坊っちゃんに生まれたわけじゃねえからいいだろ」
勉強机ではなくベッド横のローテーブルに飲み物を置いてどかりと腰をおろした。ニヤニヤとしたままのエレンはリヴァイににじりよるような形で腰をおろす。
「で、見つけたか? お宝」
「見つけた。リヴァイの卒業アルバム」
「元々普通に置いてあったやつじゃねえかよ……」
ぺらぺらと軽やかな手付きで小学生のアルバムをめくるエレンは、ただひたすらに楽しそうだ。
「顔全然変わらねえのな」
「まだ成長過程だ」
「いや、多分大人になってもその顔だと思うぞ。はぁ……幼稚園のころは目つき以外可愛いのにな」
「うるせえよ」
わざとらしくため息を吐き出して肘で脇腹をこづいた。くすぐったいと逃げる脇腹を執拗に追いかける。くすぐったがるのが面白おかしくて、今度は指先でこしょこしょとくすぐった。
「大人気ねえな、小学生か!」
「一昨年まで小学生だぞ」
「今は中学生だろ、悪かったよ落ち着けって、なあ」
息も絶え絶えな獲物をリリースすると、先程まではなかった人ひとり分の隙間を開けられる。今度はリヴァイがじりじりとにじり寄った。
「何が地雷ワードになるのかマジで分からねえ」
「別に地雷ワードなんてなかったが、お前の反応が面白かった」
「クソ素直で結構だな。今の中学生こええ」
脇腹を片手で守りながら、冷たい麦茶をこくこくと喉に流している。はぁとついた息が無駄に色っぽい。ちらりと動く流し目も同じくだ。
「不思議な匂いがするな、それ」
「お前の言ってたハーブティだぞ。ミントじゃなくてカモミールだ」
「飲んでみていい?」
「熱いから気をつけろよ」
すんすんとカップのそばで鼻を鳴らしてから、おずおずとカップに唇を付ける。ふわふわと漂う湯気がエレンの鼻先をしっとりと湿らせた。
「確かに、癖が強いな。初めて嗅いだ、この匂い。普通に売ってるのか? これも」
「ああ、売ってる。さして珍しいものでもねえ」
「そっか。……ハーブティって女の子が好きそうなイメージだったけど、違うんだな」
「お前に教えた知り合いとやらは女だったのか」
「いや、男」
思い出すように視線を遠くにやる様子に、心の内を酷くかき乱される。自分相手に嫉妬するなんて非生産的もいいところだが、感情を制することができそうにない。
「仲良さげだな」
「相手がどう思ってるのか分からねえけど……」
手を出された自分がこれ以上踏み込むと、勘のいい男なら嫉妬心を見抜くだろう。言葉に詰まって黙り込むと、エレンが盗み見るようにちらりと視線を寄越した。
「仲は良いと思う、多分」
「好きなのか?」
「そりゃあ、普通にな。その人、ちょっとリヴァイに似てる」
似ているどころか本人だ。渦を巻く嫉妬心がリヴァイの行動を狂わせる。あの日のエレンのように。
「そいつとも、こういう付き合いをしてえと思うか?」
びくりと驚く肩を掴んで、エレンの首筋に唇を寄せた。
「リヴァイ……?」
戸惑う声が遠くに聞こえる。思春期の身体は好きな相手に触れるだけで簡単に熱を孕む。無抵抗という事実だけで、燃えるような熱が下肢に集まった。
「待って、今っ……?」
「お前だっていきなりだったろうが」
汗ばんだシャツをたくし上げて、濡れた肌に舌を這わせる。十九歳のころのエレンは何を考えているのか分かりづらい男だった。しかし目の前の十九歳のエレンは違う。目一杯の感情を表情で教えてくれる。驚きと戸惑い、そしてほのかな期待感と欲望。
己のシャツも脱ぎ払って、すぐ後ろのベッドを顎でしゃくる。
「背中痛えだろ。今度は俺に、リードさせろ」
囁きついでに耳たぶに噛み付けば、まるで操られているかのようによろよろとベッドに寝転がる。舌なめずりをして、獲物の首筋に甘く噛み付いた。
「ふ、……っ」
平らな胸板を優しく撫でると、ざわざわと鳥肌が立って胸がぴんと尖る。焦らすように胸の周りを何周も撫でると、腰がいやらしく揺れた。
「乳首も性感帯なのか」
じんわりと熱が上がって汗で濡れていく身体は、指先が乳首に軽く触れた瞬間ぴくりと小さく痙攣した。
「バレ、ちゃった?」
挑発的な表情を作っているが、わずかに頬が引きつっている。うなじまで真っ赤な様子を見るに、相当恥じらっているのだろう。前に襲いかかってきたときには見られなかった顔だ。
「じゃあ、丹念に虐めてやらねえとな」
舌を伸ばして見せつけるようにちろりと舐めて、つんとつついた。腹に当たる性器が面白いぐらいにぴくぴくと連動するように動く。
「……は、っ」
片方ずつ丹念に舐めしゃぶってから指を使って同時に攻めると、反応が二乗になった。
ガチガチに膨れた性器をぐいぐいと身体に押し当てられたせいで、自分の熱まで上がって頭がくらくらとのぼせる。しかし焦らせば焦らすほどに見せる扇情的な反応をもっと見たい。布越しに柔らかく撫でてから、歯で乳首を軽く引っ掻いた。
舐めれば舐めるほど、段階的に反応が大きくなっていく。
「ん、……は、ぁ……っ」
万歳の形で上に放り投げられていた両手が、枕をぎゅっと掴んで深い皺を作る。だらんと伸ばされた足の先が、時折きゅっと丸まってシーツを掴む。ひっきりなしに漏れる喘ぎ声は、まるで挿入中のそれだ。
「なぁ、リヴァイ……っ」
叫んだわけでもないのに声が掠れきっている。蜂蜜を煮詰めたような甘ったるい声色は、何か言いたげに何度も名前だけを紡いだ。そこらの女ならばねだってくる頃合いだが、攻めても虐めても羞恥心が抜けきらないらしい。面白い。
「気持ちいいんだろ?」
わざと身体を密着させて、己の猛りきった雄を内股に押し付ける。睫毛が震えて、物欲しそうに潤んだ瞳がリヴァイをちらりと見て、ふいと逸らされた。
「気持ち、いい……けどッ」
「なら、味わっとけよ」
真っ赤に尖る乳首にどろりと唾液を絡ませて、卑猥な水音を立てながら吸い込んだ。もぞもぞと動いていた内股が、ぐいぐいと身体を強く掴む。
少し強めに摘んでみても、痛みではなく快楽を味わっているようだ。摘んだままくりくりと捏ね繰り回して、指の腹で潰しては柔らかく舐めしゃぶる。
「も、わざとだろっ……!」
ついに腕を掴まれて、手を熱い下肢に誘導された。びくびくと震えるそれは、下着の中でどれだけの甘い涙を流しているのだろう。
「可愛くおねだりしてくれるかと思ったんだがな」
「んな、可愛くおねだりとか、できるかよっ」
「強引なねだり方も、可愛かったが」
これ以上焦らせば拗ねかねない。そもそも自分自身も、次のステップに早く移りたくてじんじんとしている。
ズボンのボタンを外せば、むわりと卑猥な湿度を指先に感じた。ジッパーを下ろして、ベトベトに濡れた下着ごとズボンを下ろす。少し触れるだけで震える性器は、先端どころか根本までぐっしょりだ。
「やらしい匂い」
「う、うるせぇっ」
もうこれ以上紅潮しないほどに赤い顔は、ふてくされたように眉間に縦皺を刻んで唇を結んでいる。べったりと付いた体液を舐めた瞬間、上がっていた眉尻がハの字に下がった。
「あ、待っ、焦らされすぎてヤバイから……!」
口元で大きく膨れてびくびくと震えている。たったひと舐めでこの有様。よほど我慢していたのだろう。
「なぁリヴァイ……そこじゃなくて、ここ……」
長い脚が大きく開いて畳まれる。毛のない袋のさらに奥に、はくはくとリヴァイを誘う後孔が姿を現した。少し色みの違うそこは、ひくひくと蠢いてきゅうと締まる。
口内の唾を全て手に出して、はくりとくぼんだ瞬間にぬるりと指を差し入れる。異物を外に追い出すように予想以上の抵抗を見せた入り口は、指をさらに奥に挿れることでただただ卑猥に締め付けるだけの器官に変わった。
「ぁ、……は、なんだ、上手いな、っ」
「指突っ込むのは初めてだからな」
「わかってる。童貞貰ったの、オレだし」
だらしなく開いた唇がにぃと弧を描く。負けん気の強さはさすが男というところか。口端から滲んでいた唾液を親指で拭い、真っ赤な舌がそれを舐め取った。
わざと扇情的な姿を見せているのだろうか。わざと興奮を煽っているのだろうか。こめかみをじんわりと流れる汗を感じて舌を打った。
締め付けの強かった後孔は、すぐに柔らかくほぐれていく。思い返せば初めてのときも、挿れられるようになるまでさほど時間を要さなかった。慣れているのだろう。そうでもなければ、最初からリヴァイに襲いかかったりしない。
消えない傷が残るよう、手酷く抱いてやりたい。思い出してオカズにしたくなるほど、狂いそうな快楽を身体に刻みつけてもやりたい。渦巻く嫉妬心を振り払うように、エレンの中を荒々しくぬるりとなぞる。
「は、……そこ、いいっ」
快楽を感じる部位は予想よりも手前側に存在しているらしい。反応を示す場所を数度繰り返し撫でれば、エレンの性器はとぷりと透明な蜜を吐き出した。
「ほぐれたら、責任とって挿れろよ……っ」
行儀の悪いつま先が、股間で疼いたままのものをつんとつつく。
「リヴァイの、それを……」
思春期をどこまで挑発すれば気が済むのか。自分のペースで攻めていたはずが、気がつけば主導権をぎっちりと握られている。
「あまり煽ると、慣らさずにぶちこむぞ」
「それも、いいかもな」
一気に脳みそが沸騰した。焦る指でズボンと下着をずらして、ガチガチに猛りきった己の性器を取り出した。ぬるぬると先走りを流すそれを押し当てようとして、わずかに頭が冷える。まだ、ダメだ。
「クソ、いいわけねえだろうがっ」
痛い思いをさせたいわけではない。たった一本の指がスムーズに出し入れできるからといって、挿入するには無理がありすぎる。
先走りをぬるぬるとなすりつけると、その刺激で後孔がひくつきリヴァイを誘う。奥歯がぎしりと不快な音を鳴らした。
「は、……っ」
触れられてもいないのに、勝手に呼吸が荒くなっていく。とろとろにぬるついた後孔に、増やした指を一気に挿入した。
「はぁ、……あっ」
腰が大げさに跳ねるポイントを目指して、もう一度柔らかくつつく。前回のセックスでは、性器を挿れた状態で感じてくれていた。性感帯は指で届かない範囲にも存在しているのかもしれない。ならばやることは一つ。さっさとほぐして、エレンを犯す。
「あッ、は、んんっ、はげし……っ!」
少しでも違和感をなくすように、感じるところを指の腹で何度も擦った。はくりと開いた瞬間に指を増やして、柔らかくなるまでゆっくりと動かしては様子をうかがう。エレンの長い脚が宙を暴れて、つま先がきゅうと丸まった。
「やば、あ、あッ……あ、――ッ!」
まるで女のようだった。びくびくと痙攣してがっくりと力を落とした姿に、射精なき絶頂を知った。少しのタイムラグを経て、じわりと透明な蜜を零すところも女とそっくりだ。
「は、は……初めて、ドライでイッちゃった……」
「そりゃあ、結構なことじゃねえか」
今までの男を塗り替えられたことに、格別の満足感を感じる。興奮と喜びに唇がにやりと歪んだ。
力の抜けた後孔は指を飲み込んだまま、ときおりヒクッと動くぐらいで緩みきっている。絶頂の直後だから少し休ませるべきなのだろう。しかし、思春期の性器は眼の前の餌に我慢できないとリヴァイの思考を火照らせる。
「責任取って、挿れてやる」
指をずるりと引き抜いて、ごつごつとした腰を強く掴んだ。
「は、今かよ……っ」
自分で尻を掴んで広げたところを見るに、文句は言ったものの受け入れてくれるのだろう。さして悩むことなく、ゆっくりと性器を中へと沈めていった。
指を挿れたときと同じく、内壁は異物を外に吐き出させようと抵抗を見せる。しかしある程度すっぽりと挿れてしまうと、今度は奥へと引き入れようときゅうきゅうと性器を吸い込んだ。きつい入り口は幹を扱いて、ふんわりと柔らかな内壁は脈動しながら包み込む。脳天からつま先まで痺れておかしくなりそうだ。
「ああ、ぁ……あ、っ」
力の抜けきった声色とは逆に、肉壁はリヴァイの動きに合わせて律動しながら力が入る。指で散々可愛がったところが、ひくひくと動いて悦んでいる。奥まで差し入れると、エレンの腰がまたぴくりと跳ねる。べたついて括れた壁も感じるポイントらしい。
「ぁあっ……! あ、は……!」
腸内は性感帯の宝庫なのだろう。後孔からもたらされる快楽で思考力がずくずくに溶かされる。ただがむしゃらに腰を振っても、目の前の身体は新たな反応を示して蕩けきった顔でよろこびを表現した。
「リヴァ、……っそれも、きもち、あ、あ! あぁッ!」
腰を振らされている錯覚に見舞われる。前の世と合わせると彼よりも散々長く生きているが、手綱を握れている気がしない。犯しながらも、心の奥深くをしっかりと握られている気分だ。
「なか、中に出してもいいから……っ」
言われた瞬間、爪先から頭のてっぺんまで熱い電流が駆け巡った。こみ上げる射精感までもがエレンの手管で管理されている。
「くそっ……! 腹壊すだろ、馬鹿野郎がっ」
ぎりぎりすんでのところで性器を抜けば、吹き出した精液がエレンの上半身に飛び散った。エレンの性器がゆっくりと萎びて、とろりと白く濁った体液を漏らす。
「は、……すげえ量」
とろけきった顔でなぞるのは再戦を誘っているのか、それともこれが素直な反応なのか。
「二回戦か?」
「バカ言うなよ、もうタマん中空っぽだ」
エレンが上体を起こした反動で、上半身にこびりついた体液がどろりと線を描く。エレンの汗や体液とまじったそれが、シーツにぼたぼたと染みを作った。
「あ、やべ」
「シーツなんて洗濯すりゃあ問題ねえ」
「だって、明日家政婦さん来るんだろ?」
「いや、今から洗濯機を回す。……じゃねえと、お前の服の替えがねえだろ?」
ベッドの端でぐしゃぐしゃになっている服にちらりと視線をやる。先走りで深い染みができたそれを見て、エレンの目尻が情けなく下がった。
「なあ、泊まってけよ。乾燥機かけおわったころには、外は真っ暗だ。体力だって回復させてえだろ」
「……泊まってく。お前が学校行くとき、下まで送ってやるよ。今度はオレが漕ぐ側で」
「下り坂なんて楽勝じゃねえかお前」
よろめきながらなんとか立ち上がった姿に、堪えきれない笑いが漏れた。
誘われたわけでも襲われたわけでもない。自分から手を出したことで、もう一切の言い訳や後戻りができなくなった。はなからする気はないが。
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